新型コロナ 高齢者のワクチン接種が終われば実効接種率は75%以上になる

 

f:id:aahhpp:20210720044438p:plain

 

ワクチン接種は死亡者を減らすことが最大の目的である。その観点で接種率をみると単純な接種率とは別の実効接種率を考えることができる。致死率の高い高齢者(65歳以上)の新型コロナワクチン接種が終われば実効接種率は75%以上になる。上の図は高齢者のワクチン接種率と、死亡者からみた実効接種率の関係を示したグラフである

 

1 ワクチンの接種率を考える

ワクチン接種の目標は死亡者を減らすこと感染者を減らすことだが死亡者を減らすことがより重要である。厚生労働省新型コロナウイルス感染のデータによると65歳以上の高齢者が感染者に占める割合は約18%だが死亡者に占める割合は極めて高く95%にもなる。そのため高齢者優先で接種が行われている。ところでワクチンの接種率が話題となるが死亡者数という観点から見るとワクチンの効果は一様ではない。そうすると単純な接種率でなく実効接種率が意味を持つ。7月18日時点のワクチンの2回目接種率(全人口)は約17%であるが実際の効果という点ではもっと高いのではないかという疑問が基になっている。そこで次の数式を定義する。

ワクチン接種前の死亡者数(一定期間)               A

100%接種したときの推定死亡者数(一定期間)        B

一定期間の死亡者数  Y

実効接種率      X

Y=(B-A)X + A         X=0 のとき Y=A  X=1のとき Y=B

X= (Y-A)/(B-A)

B=A*0.1

ワクチンによって死亡率が以前の10%に減少するとみる。もっと死亡率が下がるように思えるがワクチン接種によって人々の感染警戒心が薄れることを考慮して10%とする。

 

2.実効接種率の計算

ここで上記の一定期間を変異種の影響があり死亡者も多かった2021年の前半6ヶ月とする。6月30日にはワクチン接種自体は進んでいたが死亡者数にはワクチン接種の効果はまだほとんど反映されていない。

次に厚生労働省のデータから新型コロナの死亡者数を取り出す。なお、計の値は年齢階級ごとの数を合計したものである。厚生労働省のデータの計は年齢階級不明者も入れているので一致しない。

死亡者数 10歳未満 10代 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80代以上
2020/12/29 0 0 2  9   31  89 267  781 1939  3118
2021/6/30 0 0 8 27 106 301 939 2976 8094 12451
差分 0 0 6 18   75 212 672 2195 6155  9333

 

ワクチンにより死亡率が以前の10%に減少と想定し各年代の数値の10%値をみると20歳代下の数値とだいたい合っている(70代は50代、60代は40代など)。年齢階級ごとの人口が違うので大雑把にしか言えないがワクチンの効果は新型コロナリスクを20歳分減らす。これは高齢者がワクチンを接種してもワクチン無接種の20代、30代までにはリスクが減らないことも意味する。高齢者にとってワクチン接種後も感染対策は必須である。

 

ワクチン接種の高齢者は65歳以上だが5歳刻みのデータはないので60代のデータを65歳未満 25% 65歳以上 75%で按分し高齢者の死亡者数を求める。

死亡者数

65歳未満

65歳以上

2020/12/29

198

  2920

 3118

2021/6/30

677

11774

12451

差分

479

 8854

 9333

X=(9333-Y)/(9333-933)   X=(9333-Y)/8400

 

7月18日時点で高齢者の約58%が2回目の接種を終えている

Y=(8854*0.58*0.1+8854*0.42+479)  ⇒  Y=4711   X=0.55

 

死亡者数を基にした実効接種率は55%となる。但し、1回だけの接種でもかなりの効果があることを考えるともっと高く推定してもよいかもしれない。高齢者の1回目の接種率は最も高い岐阜県で90%を超えている。2回目の接種率をやや控えめに80%と推定する。すると

Y=(8854*0.8*0.1+8854*0.2+479)   ⇒ Y =2958   X=0.76

 

高齢者の80%が2回目の接種を終えると実効接種率は76%になる。1回目のみの接種者や65歳未満の接種者も計算に入れるともう少し高くなるだろう。

8月上旬にはほぼ高齢者2回目接種は終わる。また当然重症者数は死亡者数と相関が高いので9月以降は医療の逼迫も起きなくなるであろう。今後、若年層のワクチン接種が進むにつれて感染者の増加は抑えられるがワクチン接種が一巡すると経済活動が活発になり人々の感染警戒心も薄れ逆に感染者が増加する可能性もある。ただし致死率は減少する。ある意味で新型コロナのインフルエンザ化が生じると思われる。

 

なお、念のため2020年始めからの累計の死亡者数や2021年3月末からの3ヶ月間の死亡者数でも計算したが同様の結果となった。

 

同じ日付の厚生労働省のデータから計算して求めた陽性者数を参考に載せる。

60代のデータを65歳未満 65% 65歳以上 35%で按分し高齢者の陽性者を求めた(陽性者数は50代が70代より1.8倍くらい多い)。

 

陽性者数

65歳未満

65歳以上

2020/12/29

 179608

   38404

218012

2021/6/30

 643397

 139256

782653

差分

463789

100852

564641

 

(参考データ) 

厚生労働省新型コロナウイルス感染症の国内発生動向:2021年6月30日https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000800096.pdf

新型コロナワクチンの接種状況(一般接種(高齢者含む)) | 政府CIOポータル