新型コロナウイルス 日本人は清潔好きだから死亡率が低いというおかしな理由

1.尾身副座長の認識

5月14日に39県が緊急事態宣言解除となり新型コロナウイルスの感染も収束方向となっています。しかし、専門家会議の尾身副座長は、日本で新型コロナウイルスの感染者、死亡者が欧米と比べて低い理由を質問され、日本人が清潔好きであるからと答えたとの報道がありました。専門家でも相変わらずこの程度の認識なのかとあきれました。 アジアでタイやベトナムの感染者、死亡者は欧米と比較して極めて低いです(日本と比べても低い)。タイやベトナムの方には失礼とは思いますが彼らが日本人ほど清潔好きとは思えません。また、中国も湖北省を除けば人口当たりの感染者、死亡者は極めて低いです。私は、中国で仕事をされていた日本人から、中国では客が飲み残したコップのオレンジジュースを店員がジュースのピッチャー(注ぎ口のついた容器)に戻してしまうとの話を聞いたことがあります。その日本人は中国人に好意的な方でしたがさすがに客の飲み残しを容器に戻してしまうことには抵抗があったとのことでした。現在の状況ではそのようなことは行われていないにしてもとても中国人が清潔好きとは思われません。そして、日本人の清潔好きを日本での感染者、死亡者が少ないことの理由に挙げることは、人口当たりの感染者、死亡者が異常に多い欧米人は日本人と比べて極めて不潔な人たちということになります。そのような判断を尾身副座長はされているのでしょうか。

 

2.大和証券の石黒氏の認識

もちろん、アジアと欧米で感染率の差があることに何か本質的な理由があるのではないかを認識されている人もいます。5月11日のテレビ東京の朝の経済番組のモーニングサテライトでゲストの大和証券の石黒英之氏が「感染第2波への懸念」として各国の人口当たり感染率のグラフを示して「アジアは新型コロナウイルスに対する耐性が比較的強いとみられる一方で、欧米は新型コロナウイルスに対する耐性が弱いように見える」とコメントされていました。株式投資の立場から欧米での第2波に特に注意する必要ありとの主旨ですが医学の専門家でなくてもきちんと認識されている方もいるのだと思いました。

 

3.アメリカの感染状況 西海岸と東海岸の差

今、欧米とひとまとめにしましたがアメリカでもカリフォルニア州がある西海岸とニューヨーク州がある東海岸とでは人口当たりの死亡率に大きな差があります。死亡者が人口比でニューヨーク州カリフォルニア州の17倍です。すなわちアジア人が比較的多くアジアに近い西海岸のほうがずっと少ないのです。この理由も国内外の感染学者から納得できるものは説明されていないことが不思議です。

 

4.川崎病との関連

ところで欧米で感染率が極めて高いのと逆相関にある現象がアジアにあります。それが最近、新型コロナウイルスとの関連が疑われている川崎病です。川崎病は、日本やアジアで比較的多い病気ですが、欧米では発症例は極めて少ないようです(日本川崎病研究センターの発表資料によると2018年の日本の患者数は17364人です)。川崎病は小児科医の川崎富作氏が発見した病気ですが原因は不明とされながら何らかのウイルスや細菌が原因との説が有力のようです。日本やアジアで川崎病が多いということは結果として原因のウイルスや細菌に対する免疫を有している人が多いことになります。そしてそのことが新型コロナウイルスに対しても免疫力をある程度有していることになると私は考えます。感染学者の中でも薄々そのような認識を持っている人もいるのではないかと思っているのですが立場上、論文になっていないことは言わないのでしょうか。そして、日本人は清潔好きだから新型コロナウイルスの感染率、死亡率が低いという主張をされる方は、日本人は清潔好きなのになぜ川崎病の患者が多いのかを質問されたら答えに窮するでしょう。

 

 

次の過去記事を参照

 

aahhpp.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本人は新型コロナウイルスに対する免疫を以前からある程度有している

 

1.新型コロナウイルス感染状況 アジアと欧米の違い

新型コロナウイルスは世界中で感染が増大しているが不思議なことがあります。それは、アジアの国であるタイ、ベトナムなどの東南アジア、韓国や日本で新型コロナウイルスの欧米のような大流行がないという点です。中国でも湖北省以外の死亡者は100人余りです。アジアの大都市で流行発祥の武漢は別にしてニューヨーク市のような状態になっているところは一つもありません。この原因について次のように考えられます。アジアの国では多分中国から今回の新型コロナウイルスの類縁にあたるコロナウイルスが以前から流入しており、それに対する免疫ができていた。その結果、今回の新型ウイルスに対してもある程度の免疫効果があり大流行には至っていない。

 

2.アメリカの感染状況 西海岸と東海岸の差

米国の新型コロナウイルスによる死亡者は東海岸ニューヨーク州は西海岸のカリフォルニア州と比較して人口比で17倍もあるとのこと。これの原因をニューヨーク州のロックダウンがカリフォルニア州のロックダウンより3,4日遅れたからと説明されていますが到底それだけでは説明できません。西海岸にはアジア人も比較的多く、アジアとの交流も東海岸と比較して多いはずです。このため新型コロナウイルスに対して多少の免疫を有しているのが東海岸と比較して死亡者の少ない理由と思われます。ニューヨーク州新型コロナウイルスに対する直近の抗体検査では12.3%が抗体を有し、発表感染者数の約10倍ですがカリフォルニア州ロサンゼルス郡の4月20日発表の抗体検査では住民の4.1%が抗体を有し、発表感染者数の28倍から55倍になるとの報道がありました。この倍率の差からも上記の理由が裏付けられます。

 

3. 児童の川崎病について

最近ヨーロッパで川崎病によく似た症状の児童が何例かでており新型コロナウイルスとの関連が疑われているとの報道がありました。川崎病は川崎富作氏が発見した原因不明とされる病気で日本やアジアで比較的見られるがヨーロッパではほとんど症例がなかったようです。上記のことから川崎病に関して次の結論が言えそうです。

1)  川崎病は、新型コロナウイルスの類縁のコロナウイルスが原因である可能性が高い。

2)  類縁のコロナウイルスは日本などに以前から流入していた。このことが日本やアジアで川崎病が多い理由である。それは、日本人やアジア人が新型コロナウイルスに対してある程度の免疫を有していることの証左でもある。

 

4.神戸中央市民病院の抗体検査について

神戸中央市民病院の抗体検査で3.3%(年齢補正をすると2.7%)が抗体を保有しておりこれは神戸市民4.1万人に相当するとの発表が5月2日にありましたが神戸市の発表感染者数の約160倍です。これはPCR検査で陽性にならないレベルのウイルス量の感染でも抗体を作れる人が多いということを意味すると思われます。粗雑な抗体検査キットだと新型コロナウイルス以外のコロナウイルスにも反応してしまうものがあるらしいですが神戸中央市民病院ではそのようなものは使用しないでしょう。年代別、男女別の詳細なデータも発表されていますがそれを基に計算すると20歳代までは0%、30歳代から60歳代までは、3.3%、70歳代以上は4.0%です。男女では差はありません。年代別では高齢者に抗体を有している人が多い結果となっています。一般に言われている若い人に無症状の感染者が多いというのとは異なった結果です。高齢者に抗体を有する人が多い、あるいは少量の感染でも抗体を作れる人が多いことが欧米のような万単位の死亡者が日本で出ていない大きな原因と思われます。

 

5. 神戸中央市民病院の検査結果に基づく最大死亡者数の計算

日本の5月3日時点の新型コロナウイルスによる死亡者は厚生労働省のデータによると510人です。これは神戸中央市民病院の抗体検査時の日本の死亡者数よりも多い数ですがそのまま使用しますと日本国民がすべて新型コロナウイルスに感染するとして死亡者数は、510人/0.027=18889人です。すなわち最大でも1万9千人くらいです。政府の専門家会議では欧米の感染率を基にして何も対策をとらなかった場合に85万人が重篤な状態になり40万人が死亡すると計算していますが過大な数字としか思えません。