資産運用 投資・投機・ヘッジの役割



1.はじめに

   資産を運用する方法として3種類がある。投資、投機、ヘッジである。運用を図で表した第1象限が投資、第2象限が投機、第3,第4象限がヘッジである。

 

第1象限 投資

 横軸の所(A)は現金または現金同等物を示す。資産運用は特にしないことになる。左回りに移動するに従ってハイリスクハイリターンの投資となる。縦軸の所(B)は極めてハイリスクハイリターンの投資となる。これは例えばベンチャービジネスへの投資が該当するだろう。

 

第2象限 投機

   投機の (B) はハイリスクハイリターンの投機である。これは例えば未整備の市場での投機が該当するだろう。左回りに移動するとローリスクローリターンの投機となる。横軸の(C)は完全効率化市場における投機である。投機による利益は偶然でしか得られない。実際には手数料があるので平均収益率はマイナスとなる。従って完全効率化市場では投機はギャンブルとなるので行われなくなる。

   図の上半分は平均的なリターンがプラスの運用を示す。

 

第3,第4象限 ヘッジ

    横軸の所はノーヘッジを示す。下に行くほど例外的なヘッジとなりヘッジコストが大きくなる。ヘッジはヘッジ対象物が存在することが前提である。縦軸の (C) の所は、ハイリスクハイリターンの投資や投機に対するヘッジである。

 

2.投資(図の第1象限

 投資とは資本を投じて金利、配当、賃料などの果実を得ようとする経済的行為である。しかし、キャピタルゲインを得ようとするのを投資でないとするのは誤りである。果実を得る替わりにキャピタルゲインを得るのも投資と考えられる。不動産を貸さずにそのまま所有するのは投機行為と非難されることも多いが不動産の場合は賃貸解約のコストが極めて高いので敢えて貸さずに所有するのも多くの場合投資と考えられる。

    ただ、投資と投機の境は微妙であってここまでは投資とか投機とか言えないのも確かである。

 

    ところで株式投資の場合を考えると多くの場合、市場から株を購入することになるがなぜ株を売却する人がいるのだろうか。その理由として

①現金が必要になった。

②もっと有利な投資先が見つかった。

③株価の下落を予想した。

④ヘッジの為。

のいずれかだが購入者としては①か④の理由による売却が望ましいということができる。②や③の理由による売却の場合の購入は一般的には好ましくない。しかし過剰な下落予想が発生する場合は別である。それは暴落時である。暴落時は①や④による売却も発生するため購入には最も好ましいタイミングと言える。

 

3.投機(図の第2象限)

 投機とは市場の変動を利用して利益を得ようとする経済的行為である。現在では株式や為替取引の90%以上は投機と言われている。株式取引では、ファンダメンタルに基づいた比較的長期の取引が投資、テクニカルや一時的な人気に基づいた取引が投機と見られているがこれもその境は微妙である。キャピタルゲインを得ようとする株式取引でも投資の場合があるのは前述したが投機の場合はほとんどキャピタルゲインを得ようとする取引である。

    さて、投機行為によってなぜ経済的利益が得られるのだろうか。それとも投機は平均するとゼロサム行為なのだろうか。株式取引や為替取引について書かれたハウツー本は掃いて捨てるほどあるがこのような基本的なことについて書かれた本は全くないと言ってもいいくらいである。逆に投機は全くのゼロサムで経済的に意味のない行為とする人もいる。

筆者は投機の経済的意味として効率的市場を形成する行為であると考える

 

効率的市場とは筆者の理解するところでは、以下である。

  • 市場に十分な流動性があり取引時間内では直ちに取引が可能である。
  • 情報は直ちに価格に反映される。
  • 非合理的な価格差が生じても直ちに修正される。(裁定取引
  • 価格はランダムウオークである。

 投機は効率的市場を形成する褒美として利益を得ているということができる。

では投機家は集団として誰から利益を得ているかといえばそれは真の投資家および投資のヘッジをする人からである。

 

    彼らに主として流動性を提供する替わりとして多少の利益を得ていることになる。逆に言うと真の投資家やヘッジをする人は流動性を提供してもらう替わりに多少割高に買い、多少割安に売っていることになる。もちろん投機家は他の投機家から利益や損失を受けることのほうが多いが投機家同士のやり取りはゼロサムである。従って投機家しかいない市場では投機はゼロサムでしかない。

    ただしこの場合、投機家にも序列があり他の投機家よりすばやく対応できる場合は平均的に利益を得ることが可能である。一般の市場では投機はプラスサムであるが手数料などのコストやすばやく対応できる投機家の存在を考えると投機で平均的に利益をあげるのは容易ではない。結果的には損失を被っている投機家の方が多いと思われる。彼らにとって投機はギャンブルと同じとなる。

 

4.ヘッジ(図の第3,第4象限)

   ヘッジは保険であって保険料(ヘッジコスト)を支払う替わりに大損を回避する経済的行為である。多少の損を許容するのがヘッジであって、この先株が下がりそうなので一部を売却するのは投資や投機の中止であってヘッジではない。一方で休みに入るので株の一部を売却するのはヘッジ行為といえる。つまりヘッジは平均的には損をする取引である。その意味ではギャンブルと同じであるがギャンブルと異なるのはヘッジ対象の資産を有している点である。

   ところで損切りも一定以上の資産の減少を防止するという点ではヘッジ行為といえるだろう。

日本は、近々新型コロナ感染者が1日当たり20万人以上になる可能性あり

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(本内容は2022年4月1日(金)までのデータを基にし、前回からは約5ヶ月半経過している)

1.今年(2022年)に入ってからの感染者の大幅増加

昨年の秋には大幅に減少した日本の新型コロナ感染者は今年になって大幅に増加し1日あたり最大で10万人,東京都で2万人を超えるような状態となってしまった。

理由として以下が挙げられている。

  • 感染力の強いオミクロン型の流行
  • ワクチンの2回目接種から4~6か月以上経過し免疫力の落ちた人の増加
  • 現行のワクチンがオミクロン型に対して今一つ有効性が低い

しかし、もう一つ重大な理由があるそれは今までアジア地域の住民が新型コロナウイルスに対して有していた潜在的な免疫(交差免疫)がオミクロン型に対しては有効でないということである。そして韓国、タイ、ベトナムなど従来は欧米などと比較して感染率がずっと低かった国が高い感染率を示している。現在、感染率の世界のトップは韓国である。そして中国も少ないながら徐々に感染が増加している。

 

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日本も感染者数と死亡者数の大幅な増加となった。統計データによって多少の誤差はあるがそれぞれ7日間平均のピークの値を示す(データには曜日による偏りや報告調整があるため1日ごとの値より7日間平均の方が傾向を正しく伝える)。

全国感染者数のピーク

  2021年 (8月26日) 23075人 

  2022年 (2月11日) 94650人

全国重症者数のピーク

  2021年 (9月8日)   2206人

  2022年 (2月25日) 1507人

全国死亡者数のピーク

  2021年 (5月24日) 115人  (第4波の方が第5波より多い)

  2022年 (2月26日) 233人

今年の重症者数のピーク値は昨年ピークの約3分の2である。オミクロン型の重症化率が低いことの表れだが死亡者数はオミクロン型の方が約2倍となっている。これは不思議だがオミクロン型による感染で持病が悪化して亡くなる人が多いという説明が専門家からされている。従って、単純にオミクロン型は重症化率が低いという認識は持病がある人にとっては危険である。

2.今後、感染者拡大の予想

日本の第6波は2月上旬くらいにピークアウトしたが感染者数は3月下旬に下げ止まってしまった。対数グラフを見るとこの間の下げは緩やかであり次の上昇の準備段階のようにみえる。韓国などの例をみても近々大きく上昇し、1日当たりの感染者が20万人以上(東京都では3万人~4万人以上)になる可能性がある

3.オミクロン型を恐れる理由

筆者は昨年までは、新型コロナウイルスの感染に関して悲観的な見通しは持っていなかった。大きな理由はアジア地域の住民がコロナウイルスに対して潜在的な免疫を有していることが各国の感染データから読み取れたからである。そして専門家の過剰な感染予想に疑問を表明してきた。その疑問は正しかったと言える。しかし、オミクロン型は従来の新型コロナウイルスとは別種と考えなければならない。確かに重症率は低いが感染率が高いので死亡者数は多くなる。感染対策の最終目標は死亡者数を抑えることである。問題なのは繰り返しになるがアジア地域で感染率が極めて高くなっていることである。しかし、その点を強調する専門家はあまりいない。これは、専門家が欧米のデータは重視するがアジアのデータは軽視ないし無視しているからであろう

 

4.空港検疫データに注意すべき

感染予想に当たっては厚労省が毎日発表している空港検疫データに注意すべきであろう。このデータは日本に入国する全員を対象に検査しているので大変参考になる。入国者の陽性率は、昨年までは概ね0.3%から0.5%くらい、例外的に1%くらいであったが、今年に入り5%以上と異常に高い値になりオミクロン型の大流行となった。4月1日現在は1%強と減少しているが昨年よりは高い値である。今後、3%以上の日が何日も続くと爆発的な感染の予兆となる。

 

参考までに2021年からのアメリカ、韓国の新規感染者数(7日平均)のグラフ(対数)を載せる。今後の感染動向に注目したい

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日本は、交差免疫+ワクチン2回接種で集団免疫獲得か

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(本内容は2021年10月22日(金)までのデータを基にしている)

1.劇的な感染者の減少

日本における新型コロナの感染者の減少は劇的である。東京都の感染者は10月22日の金曜日は、わずか26名、8月13日の金曜日は最多の5773名だったので70日で0.45%までに激減した。東京都の感染者数はやがて1万人あるいはそれ以上になるといった予測も以前は行われていた。全国の感染者数も厚労省のまとめによると10月22日は345人と8月26日の2万4976名から激減している。(全国の数値は集計方法によりぶれがある)。陽性率も大幅に低下しているので検査不足が原因ではない。隣の韓国と比べても以前は人口比で日本は4倍くらいの感染者だったが現在は人口比で10分の1のときもあるといった状態である。

感染者の減少は鈍ってきたとの専門家の意見もある。確かに次の通常(非対数)のグラフを見ればそんな感じを受ける。

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しかしそれは誤りである。冒頭の対数化グラフをみれば少なくとも10月22日時点では減少スピードが大きく鈍っていることはない。このような状況を日本人は一時的にせよ集団免疫に到達したと見る専門家もいる。しかしその理由が今ひとつ説明できていない。

参考までに東京都の2020年3月からの感染者数グラフ(対数化)も載せる。まだ下げ余地があることがわかる。

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2.劇的な減少の理由

劇的な減少の大きな理由にワクチン接種の進捗があるのは確かである。10月22日時点の日本の2回ワクチン接種率は、首相官邸ホームページによると全人口に対する割合で68.6%、65歳以上の高齢者では90.3%といずれも相当高い値となっている。ワクチン接種の進捗が激減の大きな理由であるが海外ではワクチン接種率が日本を上回る国や同じくらいの国も多い。それらの国では重症化率は大幅に減少しているが依然としてかなりの感染者が出ている。アメリカは、現在2回接種率が56%くらいだが1日平均8万人ほどの感染者である。これは日本で3万人くらいの感染者が出ることと同じである。ワクチン接種率の高さだけでは劇的な減少を説明できない。筆者が2020年5月5日のブログで記述したように日本人は新型コロナに対する免疫を既にある程度有していたとみられる(学術的には交差免疫と考えられる)。詳細についてはそのブログを参照のこと(今では古くなってしまっている箇所もあるが)。

デルタ型の流行によってそのような免疫性は大幅に薄れたと思われたが、ワクチン接種によってその効果が復活したと考えられる。この免疫効果は日本だけでなく日本周辺のアジア地域にも存在する。10月22日の時点で台湾、インドネシアは新規感染者が大幅に減少している。但し、ベトナムやタイではピークからは減少しているがまだかなりの感染者が出ている。ワクチン事情などが影響しているのだろう。この交差免疫効果は遺伝的人種的な理由によるものではない。もし人種的なものだとしたらアメリカにはアジア系の移民もかなり存在するのにアメリカでアジア系の感染率が大幅に少ないとの報告が報道されたことはない。またこの免疫効果は隣の韓国では小さいようである(ワクチン接種率は日本との差はない。第1波(武漢型)のとき韓国は比較的感染者が多かった)。なぜ韓国では交差免疫効果が小さいのか、韓国には、東南アジアや日本にあるような中国人町(中華街)がない。筆者は新型コロナの祖先は元々中国にいた感染力の弱いコロナウイルスでありそれにかかることにより免疫ができたと考えているので中国人町がないことが理由の一つかも知れない。

結局、日本人は2回のワクチン接種者も過去の交差免疫を考えると実質的には3回接種したのとおなじことになる。これが日本で感染者の劇的な減少が起きた理由であろう。

この集団免疫状態はある程度の期間続くと思われる。一方、シンガポールのようにワクチン接種率が80%に達した国でもブレークスルー感染による感染者が多数出ている。ワクチンの効果が薄れてきたのと行動緩和が原因のようだが日本もそうなる可能性はある。やはり感染対策は今後も重要である。

参考までに今年の日本全国、アメリカ、韓国の新規感染者数(7日平均)のグラフ(非対数)を載せる。今後の感染動向に注目したい。

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新型コロナ 高齢者のワクチン接種が終われば実効接種率は75%以上になる

 

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ワクチン接種は死亡者を減らすことが最大の目的である。その観点で接種率をみると単純な接種率とは別の実効接種率を考えることができる。致死率の高い高齢者(65歳以上)の新型コロナワクチン接種が終われば実効接種率は75%以上になる。上の図は高齢者のワクチン接種率と、死亡者からみた実効接種率の関係を示したグラフである

 

1 ワクチンの接種率を考える

ワクチン接種の目標は死亡者を減らすこと感染者を減らすことだが死亡者を減らすことがより重要である。厚生労働省新型コロナウイルス感染のデータによると65歳以上の高齢者が感染者に占める割合は約18%だが死亡者に占める割合は極めて高く95%にもなる。そのため高齢者優先で接種が行われている。ところでワクチンの接種率が話題となるが死亡者数という観点から見るとワクチンの効果は一様ではない。そうすると単純な接種率でなく実効接種率が意味を持つ。7月18日時点のワクチンの2回目接種率(全人口)は約17%であるが実際の効果という点ではもっと高いのではないかという疑問が基になっている。そこで次の数式を定義する。

ワクチン接種前の死亡者数(一定期間)               A

100%接種したときの推定死亡者数(一定期間)        B

一定期間の死亡者数  Y

実効接種率      X

Y=(B-A)X + A         X=0 のとき Y=A  X=1のとき Y=B

X= (Y-A)/(B-A)

B=A*0.1

ワクチンによって死亡率が以前の10%に減少するとみる。もっと死亡率が下がるように思えるがワクチン接種によって人々の感染警戒心が薄れることを考慮して10%とする。

 

2.実効接種率の計算

ここで上記の一定期間を変異種の影響があり死亡者も多かった2021年の前半6ヶ月とする。6月30日にはワクチン接種自体は進んでいたが死亡者数にはワクチン接種の効果はまだほとんど反映されていない。

次に厚生労働省のデータから新型コロナの死亡者数を取り出す。なお、計の値は年齢階級ごとの数を合計したものである。厚生労働省のデータの計は年齢階級不明者も入れているので一致しない。

死亡者数 10歳未満 10代 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80代以上
2020/12/29 0 0 2  9   31  89 267  781 1939  3118
2021/6/30 0 0 8 27 106 301 939 2976 8094 12451
差分 0 0 6 18   75 212 672 2195 6155  9333

 

ワクチンにより死亡率が以前の10%に減少と想定し各年代の数値の10%値をみると20歳代下の数値とだいたい合っている(70代は50代、60代は40代など)。年齢階級ごとの人口が違うので大雑把にしか言えないがワクチンの効果は新型コロナリスクを20歳分減らす。これは高齢者がワクチンを接種してもワクチン無接種の20代、30代までにはリスクが減らないことも意味する。高齢者にとってワクチン接種後も感染対策は必須である。

 

ワクチン接種の高齢者は65歳以上だが5歳刻みのデータはないので60代のデータを65歳未満 25% 65歳以上 75%で按分し高齢者の死亡者数を求める。

死亡者数

65歳未満

65歳以上

2020/12/29

198

  2920

 3118

2021/6/30

677

11774

12451

差分

479

 8854

 9333

X=(9333-Y)/(9333-933)   X=(9333-Y)/8400

 

7月18日時点で高齢者の約58%が2回目の接種を終えている

Y=(8854*0.58*0.1+8854*0.42+479)  ⇒  Y=4711   X=0.55

 

死亡者数を基にした実効接種率は55%となる。但し、1回だけの接種でもかなりの効果があることを考えるともっと高く推定してもよいかもしれない。高齢者の1回目の接種率は最も高い岐阜県で90%を超えている。2回目の接種率をやや控えめに80%と推定する。すると

Y=(8854*0.8*0.1+8854*0.2+479)   ⇒ Y =2958   X=0.76

 

高齢者の80%が2回目の接種を終えると実効接種率は76%になる。1回目のみの接種者や65歳未満の接種者も計算に入れるともう少し高くなるだろう。

8月上旬にはほぼ高齢者2回目接種は終わる。また当然重症者数は死亡者数と相関が高いので9月以降は医療の逼迫も起きなくなるであろう。今後、若年層のワクチン接種が進むにつれて感染者の増加は抑えられるがワクチン接種が一巡すると経済活動が活発になり人々の感染警戒心も薄れ逆に感染者が増加する可能性もある。ただし致死率は減少する。ある意味で新型コロナのインフルエンザ化が生じると思われる。

 

なお、念のため2020年始めからの累計の死亡者数や2021年3月末からの3ヶ月間の死亡者数でも計算したが同様の結果となった。

 

同じ日付の厚生労働省のデータから計算して求めた陽性者数を参考に載せる。

60代のデータを65歳未満 65% 65歳以上 35%で按分し高齢者の陽性者を求めた(陽性者数は50代が70代より1.8倍くらい多い)。

 

陽性者数

65歳未満

65歳以上

2020/12/29

 179608

   38404

218012

2021/6/30

 643397

 139256

782653

差分

463789

100852

564641

 

(参考データ) 

厚生労働省新型コロナウイルス感染症の国内発生動向:2021年6月30日https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000800096.pdf

新型コロナワクチンの接種状況(一般接種(高齢者含む)) | 政府CIOポータル

新型コロナウイルス 都道府県別感染率と人口密度との相関係数は0.65

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1.新型コロナウイルスの感染率と何が関係するのか

新型コロナウイルス都道府県別の感染率と関係がありそうなものを調べると人口密度との相関係数が0.65とかなり高いことが判明した(感染者数のデータは5月30日時点)。相関係数は、+1が順相関100%、0が相関性全くなし、-1が逆相関100%という指標である。やはり、密な状態は感染率を高くすることになる。一人当たり県民所得との相関係数は、0.58である。(なお、人口密度と一人当たり県民所得との相関係数は、0.68である)。人口密度が高い地域は、一人当り所得も相対的に高い。また一人当り所得が高いことは海外との交流も大きい。それにより感染率が高まるとも考えられる。表1にデータを掲載する。表2は、人口密度、一人当たり県民所得、感染率を1位から47位までの順番に並び替えたものである。人口密度と感染率の散布図のグラフものせてみた。右上の点はもちろん東京である。

 

表1           新型コロナ  
  人口 人口密度 ランク 一人当り所得 ランク 感染者数 感染率 ランク
  千人 人/㎢   千円   人/10万人
全国 126,167 339   3,217   16,501 13.1  
北海道 5,250   67 47 2,617 35 1,081 20.6  4
青森 1,246 131 41 2,558 38     27  2.2 38
岩手 1,227   81 46 2,737 31       0  0.0 47
宮城 2,306 318 19 2,926 21     88  3.8 29
秋田   966   84 45 2,553 39     16  1.7 40
山形 1,078 117 42 2,758 30     69  6.4 22
福島 1,846 135 40 3,005 16     81  4.4 28
茨城 2,860 472 12 3,116 10   168  5.9 25
栃木 1,934 304 22 3,318  3     65  3.4 33
群馬 1,942 307 21 3,098 11   149  7.7 16
埼玉 7,350 1,930  4 2,958 18 1,003 13.6 11
千葉 6,259 1,213  6 3,020 15   907 14.5  8
東京 13,921 6,300  1 5,348  1 5,231 37.6  1
神奈川 9,198 3,798  3 3,180  7 1,359 14.8  7
新潟 2,223 179 34 2,826 27     83  3.7 30
富山 1,044 247 25 3,295  5   227 21.7  3
石川 1,138 273 23 2,908 23   298 26.2  2
福井   768 185 31 3,157  8   122 15.9  6
山梨   811 183 32 2,873 26     64  7.9 15
長野 2,049 152 38 2,882 25     76  3.7 31
岐阜 1,987 188 30 2,803 28   150  7.5 17
静岡 3,644 471 13 3,300  4     76  2.1 39
愛知 7,552 1,457  5 3,633  2   507  6.7 21
三重 1,781 310 20 3,155  9     45  2.5 37
滋賀 1,414 352 15 3,181  6   100  7.1 18
京都 2,583 562 10 2,926 22   358 13.9 10
大阪 8,809 4,626  2 3,056 13 1,782 20.2  5
兵庫 5,466 653  8 2,896 24   699 12.8 12
奈良 1,330 363 14 2,522 40     92  6.9 19
和歌山   925 198 29 2,949 19     63  6.8 20
鳥取   556 160 37 2,407 45       3  0.5 46
島根   674 101 43 2,619 34     24  3.6 32
岡山 1,890 267 24 2,732 32     25  1.3 42
広島 2,804 332 17 3,068 12   167  6.0 24
山口 1,358 224 28 3,048 14     37  2.7 36
徳島   728 178 35 2,973 17       5  0.7 44
香川   956 513 11 2,945 20     28  2.9 34
愛媛 1,339 238 26 2,656 33     82  6.1 23
高知   698   99 44 2,567 37     74 10.6 13
福岡 5,104 1,024  7 2,800 29   729 14.3  9
佐賀   815 336 16 2,509 43     47  5.8 26
長崎 1,327 325 18 2,519 41     17  1.3 43
熊本 1,748 237 27 2,517 42     48  2.7 35
大分 1,135 180 33 2,605 36     60  5.3 27
宮崎 1,073 140 39 2,407 46     17  1.6 41
鹿児島 1,602 176 36 2,414 44     10  0.6 45
沖縄 1,453 635  9 2,273 47   142  9.8 14

 

表2      
都道府県順位    
  人口密度 一人当り所得 新型コロナ感染率
1 東京 東京 東京
2 大阪 愛知 石川
3 神奈川 栃木 富山
4 埼玉 静岡 北海道
5 愛知 富山 大阪
6 千葉 滋賀 福井
7 福岡 神奈川 神奈川
8 兵庫 福井 千葉
9 沖縄 三重 福岡
10 京都 茨城 京都
11 香川 群馬 埼玉
12 茨城 広島 兵庫
13 静岡 大阪 高知
14 奈良 山口 沖縄
15 滋賀 千葉 山梨
16 佐賀 福島 群馬
17 広島 徳島 岐阜
18 長崎 埼玉 滋賀
19 宮城 和歌山 奈良
20 三重 香川 和歌山
21 群馬 宮城 愛知
22 栃木 京都 山形
23 石川 石川 愛媛
24 岡山 兵庫 広島
25 富山 長野 茨城
26 愛媛 山梨 佐賀
27 熊本 新潟 大分
28 山口 岐阜 福島
29 和歌山 福岡 宮城
30 岐阜 山形 新潟
31 福井 岩手 長野
32 山梨 岡山 島根
33 大分 愛媛 栃木
34 新潟 島根 香川
35 徳島 北海道 熊本
36 鹿児島 大分 山口
37 鳥取 高知 三重
38 長野 青森 青森
39 宮崎 秋田 静岡
40 福島 奈良 秋田
41 青森 長崎 宮崎
42 山形 熊本 岡山
43 島根 佐賀 長崎
44 高知 鹿児島 徳島
45 秋田 鳥取 鹿児島
46 岩手 宮崎 鳥取
47 北海道 沖縄 岩手

 

2.地域の分析

感染率が一番高いのは東京都であり、人口密度や一人当り所得も一番高い。東京都の中でも感染率が高いのは港区、新宿区、渋谷区といった都心である。都心部は昼間人口を加味すると人口密度が極めて高い。なお、東京を除いてしまうと人口密度との相関係数は、0.43と低くなる。また、感染率の、3位、2位、6位は富山、石川、福井の北陸3県で人口密度は平均より低いのだが所得ランクが、5位、23位、8位と比較的高いことが関係しているのだろうか。富山、石川については北陸新幹線の影響も考えられる。感染率が一番低いのは、現在感染者0の岩手県である。岩手県の人口密度は北海道についで低い。一方北海道は感染率4位と高い。人口密度だけならば北海道は感染率がもっと低くてよいはずであるが、札幌に人口が集中していること。道外からの人の流入が多いこと。中国人観光客が多かったことが高くなった理由であろうか。

 

参考データ

  

新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年5月31日版)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11606.html

都道府県の検査陽性者の状況(空港検疫、チャーター便案件を除く国内事例)

https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000635537.pdf

 

総務省統計局 

人口推計(2019年(令和元年)10月1日現在)

統計でみる都道府県のすがた2020 人口密度(2018年)

日本の統計2020 3-15 県民経済計算 一人当たり県民所得(2016年度)

 

新型コロナウイルス 「未感染者の半数、すでに免疫?」との報道

1.読売新聞オンラインの報道

5月19日の読売新聞オンラインで

「【独自】未感染者の半数、すでに免疫?・・・他のコロナウイルス感染の経験影響か」との見出しの報道がありました。

(【独自】とは読売新聞単独報道の意味でしょうか)

その記事の重要部分を引用いたします。

 

新型コロナウイルスにまだ感染していない人の約半数が、すでに免疫を一定程度持っている可能性があるとする研究結果を米ラホイヤ免疫研究所の研究チームが近く米科学誌セルで発表する。過去に他のコロナウイルスに感染した経験が影響したとみられている。」

「研究チームは、流行が始まる前の2015~18年に米国で収集された20~60歳代の保存血液20人分を調べ、約半数から新型コロナウイルスを認識する免疫細胞「ヘルパーT細胞」を検出した。」

「ヘルパーT細胞は、「免疫の 司令塔」とも呼ばれ、ウイルスを攻撃する抗体を別の免疫細胞「B細胞」に作らせるなどの役割がある。研究チームは、風邪の原因となる通常のコロナウイルスに感染した経験によって、免疫系が新型ウイルスも認識できるようになる「交差免疫」が起きたと考えている。」

 

上記の内容から「未感染者の半数、すでに免疫?」との見出し報道となったと思われますが、もしこのことが事実ならば大変な研究結果だと思います。しかし、その後のネット情報をみると後追いで報道しているものはないようです。米科学誌に正式に発表されてからということなのでしょうか。

 

2.ラホイヤ免疫研究所とは

上記報道では、ラホイヤ免疫研究所となっていますが正確には米国カリフォルニア州にある La Jolla institute of immunology のようです(ラホヤ・アレルギー免疫研究所の訳もある)。日本の高名な免疫学者であった故石坂公成氏(妻の照子さんも免疫学者)も所長をされていました。現在も多くの日本人学者が研究所に参加しているようです。それだけ信頼の高い研究機関だと思われます。ただし、研究所がカリフォルニア州にあることから分析対象となった血液もカリフォルニア州民のものであった可能性があります。新型コロナウイルスによる死亡率が西海岸のカリフォルニア州東海岸ニューヨーク州の17分の1とはるかに低いので研究結果が米国の平均でない可能性もあります。

 

3.この研究結果が意味する重大性

米国で新型コロナウイルスの未感染者の半数がすでに免疫を保有しているという研究結果が正しければ、感染者と合わせてすでに集団免疫に近い状態になっているとも考えられます。また、日本やアジアではさらに多くの未感染者がすでに免疫を保有しておりそのため感染率や死亡率が欧米に比べてはるかに少ないと考えることができるでしょう(私の過去記事を参照してください)。この研究結果の意味するものは今後の新型コロナウイルスの対策にも当然大きな影響を与えます。ともかく正式な発表や検証報道を待ちたいと思います。

 

 

aahhpp.hatenablog.com

 

新型コロナウイルス 抗体検査と最新のダイヤモンドプリンセスの致死率

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1.抗体検査の結果

5月15日に厚生労働省は東京、東北でそれぞれ500人ずつの献血データ、および新型コロナウイルス流行以前の保存血液500人分について日本赤十字社に依頼していた新型コロナウイルスの抗体検査結果を発表しました。結果は厚生労働省の「抗体検査キットの性能評価」(pdfの場所は下記)によると東京で最大3人(0.6%)、東北で最大2人(0.4%)、保存血液で最大2人(0.4%)でした。4種類の検査キットと1種類の試薬を用いる方法で調べたとのことです。当初は5月1日に発表との報道がありましたがなかなか発表されず15日にやっと発表されました。この抗体検査計画時に入手できたと思われるアメリカの抗体検査は抗体を保有している人が想定を超えて多いという結果でした。最初の発表は西海岸のカリフォルニア州サンタクララ郡の約1000人対象の検査で公表感染者数の50倍から85倍が抗体を保有している。すなわち感染していたというものです。その後ニューヨーク州で公表感染者数の約10倍、住民の15%が抗体検査陽性などの発表がありました。5月2日に神戸中央市民病院の外来患者の抗体検査で3.3%(年齢補正で2.7%)が陽性との発表もありました(ただし、神戸中央市民病院の発表時には厚生労働省の抗体検査はすでに終了していたと思われます)。おそらく厚生労働省は東京で2~3%くらいの陽性が出ることを想定していたのではないでしょうか。それで500人規模の検査人数で統計学的に十分としたのでしょう。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000630744.pdf

 

2.予想外の結果

しかし、今回の結果は意外なものでした。東京と東北では人口あたりの新型コロナウイルスの感染率に約10倍の差があります。東京の実質人口は住民基本台帳による人口より多いので倍率はもう少し低くなるとは思いますが大差があることは確かです。しかし、結果は1.5倍の差でしかありません。また、新型コロナウイルスに感染していないはずの2019年1月~3月の保存血液から0.4%の陽性が出ましたが、厚生労働省の注釈では (一般的には0.4%程度の非特異は許容)と記述されているのでそれ自体はあまり問題ないようです。問題は非特異、すなわち擬陽性の率を0.4%とすると、東京の結果は0.6%-0.4%=0.2%、東北の結果は0.4%-0.4%=0%となる可能性があることです。もちろん500人のデータなので誤差があることは当然ですが事前に想定されていたと思われる値よりずっと小さな値です。

 

3.サンプル上の問題点

ここで問題なのは東京、東北のデータが日本赤十字社の4月の献血データという点です。献血は原則16歳から64歳までが献血可能年齢です。日本赤十字社献血データによると年代別の献血率が大きいのは40代、50代です。この年齢は現在の日本人の平均年齢約49歳と大体同じなので年齢的な偏りはないと考えられます。しかし、4月に外出自粛が叫ばれていたときに献血する人は健康に自信がある人と思われます。例えば1週間前に熱があったが今は平熱という人は今回の献血には来ないでしょう。感染していた可能性がある人が献血に来た確率は低いと思われます(全く無症状の人は来るとは思いますが)。その結果、抗体の陽性率がやや低くなった可能性は有り得ると思います。6月以降1万人規模抗体検査を予定しているとの厚生労働省発表がありました。東京都や沖縄県でも抗体検査を予定しているようです。これらの抗体検査に期待します。

 

4.致死率について ダイヤモンドプリンセスの場合

ところで、抗体検査の結果、感染者の想定数が変わるとなると新型コロナウイルスによる想定致死率の値も変わってきます。日々発表される死亡者数を公表される感染者数で割っても公表感染者数は実際の感染者数の一部ですから便宜的な致死率でしかありません。現在、感染者の致死率がわかるのは乗客乗員のほぼ全員をPCR検査したクルーズ船ダイヤモンドプリンセスのデータです。5月16日現在の厚生労働省のデータ(新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について)によると陽性者712名(症状のある人は381名)で現在の死亡者は13名です。(オーストラリア帰国後に死亡した1名については船内での検査の状況が不明なので除く)。そうすると現在の致死率はPCR陽性者で1.8%、そのうち症状のあった人では3.4%となります。しかしダイヤモンドプリンセスの乗客には高齢者が多かったようですのでこの致死率を一般的な致死率とするには年齢補正をする必要があります。結局、PCR陽性者の致死率は1%ぐらい、症状のあった人で2%ぐらいがまずまずの推定値でしょうか。

 

5.患者致死率と感染者致死率

ここで抗体検査の結果、例えば、感染者がPCR陽性者の3倍推定されるとなると致死率が0.3%くらいとなります。インフルエンザの致死率が0.1%と推定されているようですからこの場合インフルエンザと比べて極端に重い病気ではないとの解釈も成り立ちます。そのような主張もネットでされています。しかし私は病気の重さを示す致死率は、症状のある人(患者)を基準にすべきと考えます。患者致死率は前述のとおり2%くらいと推定できます。すなわちインフルエンザの約20倍です。これが一般的な実感だと思います。抗体検査の結果によって病気の重さを示す患者致死率は変わらないということです。感染者を基準とした致死率は、感染者致死率として別に定義するべきでしょう。